自称山崎賢人似26歳日記

自称山崎賢人似の26歳の日記です。彼女はいます。

「祖父の記憶」という名のトドメの接吻

お題「もう一度行きたい場所」

 

実際に体験したことか、記憶違いか、定かではないが、

印象深い情景がある。

 

それは、海だ。

場所に関する記憶それしかない。

 

その情景の登場人物は

・ぼく

・祖父

・女性

の三人だ。

女性に関しては、それが祖母だったのか、母だったのか、分からない。

 

それは曇っていた。

海は灰色に濁っていた。

ぼくの小さいからだを両手で抱き上げた祖父は、

そのまま波際からぐんぐん沖に進み、水位がその腰の高さまでくるほどの深さの場所まで進んだ。

祖父の身長は180cmぐらいあったので、実際の水位は1mより少し高いぐらいだったと思う。

 

女性が砂浜に敷いたレジャーシートに座り、ぼんやりぼくらを眺めている。

 

情景の中のぼくは、祖父の腕の中で、自分の背丈ほどの水位の場所まで、連れてこられたことに対する恐怖でいっぱいだった。

 

そんなぼくの気持ちを知ってかしらずか、

祖父は砂浜を背に向けてそのからだを太陽に照らされたまま、立ち尽くしている。

 

ぼくは祖父の腕の中から、祖父の顔を見上げる。

影になって表情が見えない代わりに、顎の周りを覆う、白く細かい髭が見える。

 

しばらくして、

沖から背の高い波が迫ってくる。

当然、小さいぼくの目線よりも高い位置にその波はある。

 

迫り来る波に怯え、顔を祖父のお腹に埋める。

 

祖父は、

ぼくのことを一瞬だけ、強く抱いた。

 

そして、次の瞬間。

飛沫をあげて迫り来る波の中に、小さなぼくのからだを思い切り、投げ込んだ。

 

状況を理解する間も無く、

みずにのまれるぼく。波に激しく転がされる。

みずをたくさんのむぼく。波が体を沖へと運ぶ。

 

水をかなりの量飲み、呼吸をしようとするたびに水を飲み、喉が塩辛くなる。

手を伸ばすも、波に転がされて、どこに向かって手が伸びているかもわからない。

小さいながら、

ぼくは、死ぬ。と予感した。

気を失った。

 

どのくらいの時間が過ぎていたのか。

気を失ったぼくが目を覚ますと、砂浜に敷いたレジャーシートに座る祖父の腕に抱かれていた。

祖父の横に座る女性が微笑む。

その女性は微笑みながら、

「お兄ちゃんも同じことをされたのよ」

と言った。

 

祖父がその時どんな顔をしていたのか、全く覚えていない。

なぜ、そんなことをぼくと兄にしたのか、わからない。

 

実感とてはは残っているものの、

本当にあった出来事なのか、なぜかあんまり自信がない。

それは、僕の中にボケてしまった祖父の記憶しかないからかもしれない。

 

時折、夢に見たりふとした折に思い出したりすると、

僕はとても懐かしくて嬉しい気持ちになる。

 

その確か記憶なのかなんなのか不明な情景は、

とてもあたたかいからだ。

 

祖父は優しかった。

ボケてしまっても優しかった。

大好きだった。

 

ふと、押してみたはてなブログの「お題スポット」のおかげで、

あと、そんな祖父のことを思い出すことができた。

 

ありがとう。はてなブログ